2012年10月07日

31 念願の奈良最南端の地へ(上湯川1◆127本目)

水位:なし 参考:0.45m(龍神) 17.60〜20.30t(椿山ダム流入量) 気温:22℃(風屋)
天気:快晴 区間:出谷温泉〜西川出合(約3.5km) 勾配:14.3‰(180m→130m)
所要時間:1.50h メンバー:ソロ



 不意に目が覚める。ケータイを手にとって見ると3時。寝入りしなクルマの屋根を叩いていた雨音は、止まっていました。夜のしじまがあたりを包む。もともと仮眠だけして未明から行動開始予定でしたが、全然アタマが働かない。かといって、寒かったり、身体が痛かったりで寝つくこともできない。ぼうっとしてまどろむ時間が続く。5時を迎え、ようやく動けるようになったんで、30分ほど足湯に浸かると、だんだんと覚醒してきました。
 ここ、道の駅十津川郷には、24時間入れる足湯があるんです。

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 十津川といえば、昨年9月の台風12号TALASの記憶がまだ新しい。2004年のTAKAGEに匹敵するインパクトでした。深層崩壊、土石流、土砂ダム…。その後どうなったんだろう。道路状況からみれば、今なお復興途上という印象です。足湯に浸かりながら、十津川村観光協会のサイトをひととおり目を通してみると(ガラケーのiモードのため甚だ見づらかったですが)、温泉、旅館など観光施設はほぼ例年どおり営業、続いて漁協のサイトによれば、あまごは例年どおりでしたが、あゆはその生息域の中下流域に大量の土砂が堆積しているため休漁、となっていました。

 5時半から運転再開。道の駅から先は、カーナビにはないトンネルがドーンとぶち抜かれており、あっという間に十津川温泉に到着しました。十津川流域で見てみたい、下ってみたい川の候補はいくつかありましたが、最初に下りたい川はだいたい決めていました。
 上湯川です。“playboating@jp vol.25”(2009年夏号)にも紹介されてますんで、新宮川水系の中では北山川、大塔川、四村川などと並んで比較的名の知れたほうだと思います(たぶん)。

 上湯川(かみゆがわ)は、紀和山脈引牛越(標高750m)を水源とし、紀和山脈南部および果無山脈北麓の支川を集めて東流し、十津川村平谷桑畑境にて西川(にしがわ)右岸に注ぐ、新宮川水系の一級河川です。

 夜が明けて初めて気付きましたが、十津川本川は赤濁りの濁流。十津川温泉前に佇む二津野ダムへの流入量は70tを越えていました。どうやらここいらはまだ先日の台風19号の影響が残っているようです。
 西川との出合に到着。気になる点は二点ありました。ひとつは昨年の台風12号による堆砂の影響。もう一つは水量です(水位計がないんで行ってみないと分からない)。とくに堆砂については、(本来海に流出するものが)二津野ダムで遮られるため逃げ場がない。荒瀬も淵も、埋め尽くされていやしないかと心配でしたが、周辺を散策した限りでは、とりあえずカヌーで下る分には問題なさそう。水の色は、軽い濁りの入ったコバルトブルー。奥多摩の日原川みたいな、石灰質の山から流れる川に多い色ですね。いっぽう、本川の西川は灰色の濁り。地元の中学校のレポートによれば、西川はまとまった雨が降るとたいてい濁るらしい。

 6時から下見開始。昨日の記事の冒頭にもありますが、今週末はもともと上湯川に行く計画はありませんでした。なもんで、当該の“playboating@jp”は関東の自宅に置きっぱなし。下調べしたのもだいぶ前なんで、さすがに記憶になく、ほぼゼロスタートでした。12kmくらい遡上するうちに入川道をいくつか発見しましたが、どれもこれも決め手に欠ける。8時まで約2時間動きましたが、結局、マサゴン会長にも電話して情報収集。朝っぱらからすみませんでした。

 漕ぎたい区間は、“playboating@jp”でいうミドル〜ロワーセクションでしたが、回送距離が10kmくらいあります。また、遡上するにつれ水量も減ってしまってました。

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 長く漕ぎたい思いも強いですが、楽をしたい気持ちには勝てません。10kmはまずよう歩かん。それに、プットインもなるべく楽なところがいい。でもって、早いとこ終わらせて、十津川温泉にゆったり浸かりたい。もう若くないですからね。(^^;;

 ということで、西川出合から4km弱の距離で入川しやすい出谷温泉がプットインとしてはベストかな、と。とはいえ温泉施設の道をカッテに拝借すんのもどうやろと、聞き込みに下りてみましたが、あたりには誰もいない。それもそのはず、ここは昨年の台風12号で被災したまま、復旧されていなかったのです。脱衣所や浴槽は、砂を被ったままでした。千切れたのぼりや、地元の小学生が作成したであろう解説の掲示物がなんだか痛々しい。掲示物自体はキレイに残っているので、察するに膝から腰のあたりまで浸かったようです。

 西川出合にクルマを停めて回送。
 歩き始めて最初の1.5km程度は平瀬のみの川相。台風12号以前がどんなのか分からないですが、おそらく堆砂の影響が大きいエリアと予想されます。なんたって川原の規模がデカい。四万十川中流域みたいな、山間の大河っぽい雰囲気さえあります。

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 右手に直角カーブするところがおそらく「分岐点」。ここから車道は登りがきつくなり、高低差がどんどん出てきます。いかにも渓谷って感じで、川はほとんど見えず、瀬音だけが聞こえる状態。はー、こんなトコよう下ろうと思えるなあ。事前にそこそこ情報が集められているから挑戦しようという気になれるけど、何もない状態だったらきっと二の足を踏むことでしょう。こういう川をゼロから開拓した先人には、ホンマ感服しますですわ。

 結局、出谷温泉までの間、断片的にしか下見できませんでした。ただ、川はまだ死んでないという感触はつかめました。なんとなく、ですが。あとは実際に下りながら、臨機応変に対応していくしかありません。

 川に入ると、温泉の臭いがする。はたして、おそらくかつて露天風呂であった場所から水たまりができていました。しゃがみ込んでそっと指を入れてみると、飛び上がりそうなくらい熱い。その脇を、ラナがばしゃんと通過する。おいッ! 大丈夫なんか…? 火傷が心配で肉球を調べてみましたが、どうやら無事の様子。始める前から冷や汗でした。

 スタートは、9時40分すぎ。最初っから、先の見えない長ーい瀬になってます。早速、上陸して下見しました。この川、昨年の台風12号以降に下ったという話をまだ聞いたことがありません。ストレーナやシーブが新たに発生している可能性もあるんで、慎重に進めたほうがよさそうです。

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 第一印象は、やっぱり荒れてるな、と。生命を感じない。魚影はなく、苔生す岩もなければ、草もほとんど生えていない。紀伊山地といえば、むせかえるような緑に囲まれた生命の宝庫という印象が非常に強いんですが、なんだかもの寂しい感があります。

 基本的に、瀞場はありません。平瀬と早瀬のみで織り成される世界。遠目にアヤシイ(≒先が見えない)場所があれば、早めにエディーに突っ込むか、エディーがない場合は浅瀬に座礁させて都度上陸しました。いちいち上陸せずその場の判断のみで漕ぎ下っていい川かどうかの見極めは難しい。敢行すると、今年の矢田川のようなリスクが伴うわけです。あんな思いはしたくないんで、多少面倒でも必ず下見するようにしました。

 川筋が右にカーブしたところに比較的大きそうな瀬が登場。

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 陸から下見の最中に、ヘンなもの発見。さっきも見かけたんで、どうやら連番になってる模様。復旧工事関連でしょうか(もしくは復旧中か) 。てゆうか、付近に入川道がある可能性が高いということですよね。車道歩いてる時は気付かんかったけど…。

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 道探しはパスして先に進むことにしました。視界の先に大きそうなドロップが控えてます。ドロップ手前のエディーまで漕ぎ寄って再上陸。
 左側は巻いて、右側は岩に直撃というなかなか難しそうな瀬でした。こういう川ではフリップすると何かと危ない。水深がないのでケガしやすいし、淵もないんでボートやパドルを手放してしまうと流失する可能性もあります。迷いましたが、先にラナに下流で待っておいてもらって、単体で下ることにしました。左側から強行突破。

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 ドロップの後にもまだあります。長いなあ…。(^^;; 左岸側から回り込み、岩の隙間をすり抜けて突破。

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 今回は、エディーを捉えることで瀬を3部に分断し、個別撃破したような形ですが、さらに増水して瀬が繋がってしまうと厄介な瀬になりそうですね。

 しばらく漕ぎ進むと、左に急カーブしてその先に、岩がらみの瀬が現れました。

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 最後はとくに狭い。うーん、右岸ベタ狙うか…?

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 ジグザグ小刻みに動いて突破。気分はパチンコ玉です。

 なかなか終わらんなあ…。ずっと臨戦態勢で気を張りつめたままなんで、だんだん疲れてきました。そのうち、身体の節々からシュウゥゥとケムリを噴き出しそうです。

 今度は、川幅全体が岩で塞がれた瀬でした。上陸して全体を俯瞰すると、左岸ベタの隘路が通れそう。カーブしていてテクニカルでしたがこれも何とか突破。

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 瀬はまだまだ先に続いてます。左にカーブすると、不思議な光景に出くわしました。水面から1mくらいの場所に丸木橋が架けられています。右岸側には道がないのでどうやら流木みたいですが、左岸側は、あれなに? 洞窟…?

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 その入口は、ログが折り重なって塞がれていました。規模的に、去年の台風12号の名残くさい。アスタリスク *のような形をしてます。これは、ひょっとすると、魔法陣? 結界? ファンタジィな想像が膨らみ、吸い寄せられるように上陸してしまいました。

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 入ってすぐに出口が見える、隧道でした。床は湿った砂地で、水が流れた跡と、岩から染み出した水滴が落ちた跡だけがある。人間や動物の足跡は見当たりませんでした。反対側に抜けるとそこには…、大きそうな瀬が待ち構えていました。

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 流木は、頭上より高いと見立てて通過を試みましたが、いざ近付くと顔面ヒットの高さでした。慌てて身を伏せて通過。ラナも無事でした。

 隧道を迂回するように漕いだあと、再び上陸。先ほどチラ見した瀬をじっくり観察。ザラ瀬状に落ち、若干勢いを緩めたあと、右にカーブしてさらにその先にも続いているようです。カーブの先はここからではよく見えない。

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 難度的には障害物がない分、比較的下りやすい。前半部を漕ぎ下り、後半部を下見するためエディーを取ろうとしましたが、フネからでも先が見える。岩絡みで狭いけど、いけそうと判断してそのまま突入しました。本流が岩にぶち当たっております。間一髪でかわす。

 どうやら、この瀬がラストだったようです。勾配が緩やかになり、視界が徐々に開けていく。名残惜しいという気持ちよりも、ほっとしたという気持ちのほうが勝ってました。この先はうんと癒されながら下れる、はず。

 サラサラと流れ始めてまもなく、前方に不自然な光景が現れました。流木が川底に突き刺さった…というわけではなさそう。土壌が流され、砂礫で埋め尽くされ、その表層を川が流れるようになってなお、屹立していると考えるのがよさそうです。昨年の台風12号の名残と考えるのが妥当でしょうか。

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 漕がずとも、颯爽と流れていく。うちの嫁さんが好きそうな川相です。しかしこの均一でメリハリのない平瀬は、おそらく堆砂の影響によるものなんでしょう。

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 絶大なる癒し効果にフヌケになって流されていたんで、あやうくそのまま突っ込むところでした。
 ホテル山水を過ぎたところに流木が乱立。ここもおそらく、川筋が変わった影響でしょう。この先は幽体離脱しながらでも下れると思っていたのは早計でした。油断大敵です。

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 その後は90%の脱力と、10%の緊張をもって臨み、西川出合に到達。時刻は11時10分。無事、生還できました。

 前評判に違わぬ、素晴らしい川でした。台風12号以前に比べれば、おそらく瀬の形状や川筋など、川相に大きな変化(ダメージ)が加わり、荒廃していると推測されます。しかしながら、他の川に比べれば非常に変化に富み、魅力的な川相であることには変わりないと思います。雰囲気は、奥会津檜枝岐川や奥多摩日原川、奥木頭美那川(南川)を想起させるものでした。いずれも超がつくお気に入りの川ばかりです。すなわち、この上湯川もめちゃめちゃ好みということですね。

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 いつもなら、コンビニあたりでテキトーにハラを満たして慌てて帰路につくところですが今日はちょっと趣きが異なります。

 もう一つのイベント、それは十津川温泉。
 温泉が特別好きってわけでもないんですけど、なにかこう少しでもできる範囲で復興の一助をと考えた結果でした。
 西川沿いにある「昴」へ。

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 一泊二日の間、うちのクソガキたちの面倒をみてくれたお礼にと、地酒やら漬物やらお菓子やら手当たり次第にお土産大量購入。ついでに昼食もホテルのレストランでいただきました。人気No.1は「からあげ定食」とありましたが、身体が受け付けませんで、「田舎定食」にしました。もう、おっさんなんやなとしみじみ思う瞬間。

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 ちなみに、三田ICまでなんと3時間で帰れました。五條市街まで信号が皆無で、その後の下道、高速共に空いてたおかげとはいえ、想定してたより随分と近い。遠い遠いと思ってましたが、実は日帰り圏内やないかと思えるようになりました。

 十津川流域はまだまだ手つかずの領域です。これだけ大規模な水系では、近畿圏内ではおそらく最後でしょう。機会をみつけて、少しずつ開拓していきたいものです。


より大きな地図で 上湯川(出谷温泉〜西川出合) を表示


ニックネーム ラナ父 at 22:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 近畿>上湯川 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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